1Cr Drudgery―白黒徒花―
04.#A757A8 Th―群咲の魔女―Verse 3
幕間 Crimson Sick Record―とある手記―
人間とは、生まれながらにして平等ではない。誰かは「神は人の上に人を創らず、人の下に人を創らぬ」と言ったらしい。
だが、私は、否、私だからこそ断言しよう。
人は生まれ堕ちてしまった瞬間、すでに平等という理の元にいない。人として生まれてしまった以上、平等などというものは決して存在しない。
あるのは苦しみだけだ。
なればこそ、人という存在は泣きながら生まれて来るのだろう。
私だから、言える。
人とはそういう生き物なのだ。
平等などどこにもなく、ただ生まれ持ったなけなしの個性と呼ぶべき性能差で、競争せざるを得ないのだ。
この世界はそのように創られている。
私だからこそ言える。断言できる。決めつけられる。
誰もが競争を繰り返さなければ、生きていけない。人間だけではない。この世に蔓延る、ありとあらゆる生命は争うことを前提に生まれて来る。
何故、争うか。
それは平等ではないからだ。
全てが平等であるのなら争う必要はない。争える要素がない。だからこそ競い合わせるために個体の性能に差がある。
そうやって種の中で争い、奪い合わせることで種はさらなら進化を遂げ、種族間における争いは、世界そのものの進化へと繋がる。
その思惑があるからこそ、世界とは常に平等ではない。
しかし――結果は惨憺たるものだった。
生き残るのは強いものでもない、ましてや賢いものでもない。
最も脆弱で、愚鈍な種族が、結果として世界を支配した。その脆弱さ故に殺すことを効率化し、その愚かさ故に世界を衰退させる。
そんな生き物が世界を統べた。
これは――失敗作だ、と私は思う。
世界は失敗していた。当初の軌道を逸脱し、世界は全く異なる方向へと進んでいるのだろう。
この世界はすでに根本から破綻していた。
だからこそ、不要なのだ。
~とある手記より~