1Cr Drudgery―白黒徒花―

02.Cr of Messiah―救世の剣―Verse 2

 春の陽射しが眩しい。

 微睡みの中、薄く開けた目に殺到する白日に俺は目眩を覚えた。眼球が膨張するような痛み。目を固く閉ざし、俺は低い呻き声を上げる。

 カーテン開けたの誰だよ……。

 長時間の睡眠で喉は渇き、声がまともに出ない。

 頭にはまだ眠気が溜まり、いくらでも寝ることができそうだ。

 ずっと歩き通しでまともにベッドで休むこともできてなかったしな。

 小鳥の穏やかな囀りが聞こえる。人々の賑わいはなんだか遠い。

 静かで平穏な朝――もう少しくらい寝たって誰も咎めやしないだろう……。

 寝ようかな。ああ、そうだな。そうしようかな。

 ……あれ? なんか忘れてない?

 がばっと掛布を引っ剥がして勢いよく起き上がる。サイドチェストに置いておいた眼鏡をかけ、時計へと目をやる。いや、別に近眼というわけではなく、単なる伊達眼鏡なのだけれど習慣として付けてしまうのだ。

 現在時刻は十時二十三分。

 ……クロームは?

 隣のベッドへと目をやるが、そこにはすでに誰もいなかった。ベッドは綺麗に整えられ、その上に畳まれた寝間着が置かれている。

 剣がどこにも見当たらないので、おそらくすでにどこかへ出かけているのだろう。

 ……完全に寝坊だな、こりゃ。

 頭をぼりぼりと掻きながら視線を巡らせると、サイドチェストの上に紙片が一枚置かれていた。風で飛ばないようにと俺のライターで押さえられている。

 手に取り、広げてみると、見慣れた字で何かが書かれている。筋肉バカらしからぬ丁寧な字、しかし筆圧は強めの刻み込むような濃さ。セシウの字だった。

「えーと……『先に酒場に行くよ。起きたら来いよ、ネボスケ眼鏡』だぁ……?」

 紙をくしゃくしゃに丸めて握りしめ、俺は屑籠へと力一杯に投げつける。丸めたら紙は見事な軌跡を描いて、屑籠の大きく広げられた口の中へと飲み込まれた。

 あんのアマァ……朝っぱらからふざけたこと書きやがって……。

 上等じゃねぇか。直々に文句言ってやる。

 とりあえず顔洗って着替えるか。

 今のですっかり眠気が覚めた。寝覚めが最悪すぎる朝だ。日和はこんなにも最高だというのに、全部あいつが悪い……。

 今日は幼馴染みだからだとか、女だからだとか、年下だからだとか、そんな甘ったるい理由であいつに手加減はしてやんねぇ。

 そんな力強い決意の元、力強い足取りで俺は洗面所へと向かうのであった。




 ジーンズに真っ白な開襟シャツというラフかつお洒落かつ爽やかな服装に着替え、歯もしっかり磨き、髪をセットし終えた俺は部屋の姿見で自分の格好を確認する。

 ふむ、俺マジ完璧。相変わらずイケメンすぎてやばいぜ。これは今日も多くの女性を悩ましてしまうこと間違いなしだな。

 あー、自分の容姿の端麗さが恐ろしー。

 もし俺の挙動や心情を知ることができる人がいるとしたら、一応言っておこう。

 ツッコミは不要である。

 自分が一番分かっている。

 一人っきりの今くらいそんなことを思わせてくれたっていいだろう。いつも散々な扱いを受けて入れるのだ。少しくらい自惚れる余裕をくれたっていいじゃない。

 さて、準備も終えたし行くとするか。

 腰にヒップホルスターを取り付け、昨晩寝る前に手入れをした拳銃を突っ込み、胸ポケットに煙草を入れた俺は、のんびりとした足取りで部屋を出た。

 同時に隣の部屋から看板娘が出てくる。昨日みたいな寝癖はなく、亜麻色の長い髪はしっかりと整えられており、その上に三角巾を被っていた。相変わらずエプロンが似合っている。

「あら?」

「お?」

 目が合い、二人で短い声を漏らす。

「おはようございます、ガンマさ……ん」

 今、様って言いかけたな、こいつ。

「おう、おはよう」

「お疲れだったご様子ですね。クローム様達はすでに出かけていますよ」

「ああ、らしいな。俺も今からそっちに行くところ。いや、低血圧気味なせいか朝が弱くてな。今日も寝坊しちまったよ」

 寝坊したことを指摘された気分になり、俺は誤魔化すようにそんな言い訳をする。まあ、実際そうだけど。メンバー内で俺はダントツの不健康生活を送っているからな。一番健康そうじゃないプラナは生活自体は健康的だけど、病弱で貧弱なのである。

「うふふ、そんな感じはしますね。一応お三方とも待っていてはくださったんですよ?」

「そうなの? すぐに行っちまったんじゃないのか?」

 それはさすがにありえんだろう。そんな慰めはいらないぞ。なんせ三ヶ月もああいう扱いをされていれば慣れるというものである。慣れてなかったら、そろそろ俺自傷癖に目覚めてる。

「そんなことないですよ。ガンマさんだってクローム様の仲間じゃありませんか。特にセシウさんはずっと気にかけておりましたよ」

 ふふふとたおやかに看板娘は笑う。

 嘘をついてるわけじゃ……なさそうだな。

 あのゴリムスが、そんな……ねぇ?

 想像できないわな。どうせ俺にとってプラスになる理由ではなさそうだけど。

「んー?」

「ガンマさんとセシウさんって仲がとてもよろしいですよね。お付き合いは長いんですか?」

「仲はよくねぇよ、いつも喧嘩ばっかだし。まあ、付き合いは長いか……。俺が子供の時からずっと一緒にいるしなぁ」

 腐れ縁っていうのかね。なんだかんだずっと一緒にいるって感じだ。俺達の育った村にいたころはいつも一緒に行動してたかもしれない。

 あの頃からセシウは野生児で山に入って遊び回っていた。それに付き合わされる俺は毎日疲れ切って、夜もぐっすり眠っていた気がする。

「本当に長いお付き合いなんですね。最初は恋人同士なのかと思ってしまいましたよ? あまりにも仲がよろしいので」

「だからよくねぇっての。つぅかあいつと付き合うとかねぇわ。まず向こうが嫌がりそうだしよ。俺もその気はない」

 もう兄妹みたいなもんだ。俺もあいつも恋愛感情なんてもんは持てないだろう。

 しかし看板娘は不思議そうに首を傾げる。

「そうですかね? お似合いだと思うのですけれど……」

「喧嘩ばっかだよ、ずーぅっと」

 それに仮にもしあいつと付き合うことになっても、あいつに振り回され続けたら俺が疲れちまう。体が持たねぇわ。

 この手の話題は苦手だ。あいつは幼馴染みの妹みたいなものとして俺の中で完結してる存在であって、恋人とかそういうものに変化するってのはどうにも想像できない。

 あまり話してもしょうがないことなので話題を変えるか。

「つぅかお前、クロームにはまだ様付けなのかよ?」

「うっ……す、すみません……。やっぱりご本人を目の前にするとどうにも呼びづらくて……」

 がっくりと項垂れる看板娘。まあ、頑張ったんだろうな。

 真面目な子だ。何度も試みて、それでも恐れ多くて様付けにしてしまう姿が容易に想像できる。

「努力は認めよう。もし今度クロームと話す機会があったら、俺もサポートしてやるよ」

「そ、そうですか? それはとても嬉しいです!」

 にっこりと笑って俺にわざわざ頭を下げる看板娘。本当に素直な子だ。こういう真っ直ぐなところはやっぱり好感持てるな。

 勇者の仲間じゃなかったら本気で言い寄っていたかもしれない。この村自体、気さくで自然体な人達ばかりで俺は気に入っている。本気でこの村に定住してもいいと思ってるくらいだ。

 こういうのどかな場所は憧れる。普段、戦ってばかりの明日も分からぬ日々を送っていると特に。

 目の前で当然のように繰り広げられる平穏は、何よりも眩しく綺麗に見える。

「そういえば! ク、クローム様が、私にお疲れ様って仰って下さったんです! あのクローム様が! 私みたいな小娘一人にそんな勿体ないお言葉をかけてくださったんですよ!」

 少女は思い出したようにそんなことを嬉々とした顔で語る。大きな目は純粋に輝き、本当に愛らしい。

「あー、まあ、クロームだしな。それくらい別に」

 あいつは人にお礼を言うことは忘れないからな。言葉数は少ないくせによ。狷介孤高なように見えて、意外と人と関わりを持つのは嫌いじゃないのだ、あいつは。

「それくらい、じゃないですよ! クローム様がお礼を言って下さったのですよ! こんなに光栄なことはありません! あの時のクローム様はすごく優しい表情をされていて……とても、素敵でした……」

 夢見心地に頬を赤らめ、想いを馳せるように目を閉じる看板娘……。

 くっそ! アンニャロ!

 また俺が好意を抱いた女の心を奪いやがった! しかも無自覚に!

 次から次に罪もなき女性の心を惑わせるようなことをしやがって!

 これだから意識しないイケメンは厄介なんだ! 作為がない分逆に好感を持たれやがる!

 いつも仏頂面で冷たくしてればいいものを、そうやって不意打ちに優しさを振り撒きやがって!

 いっそあいつが女ったらしだったら俺も諦めがつくってぇのに!

 旅をしていてよくあることである。行く先々で俺が好意を抱いた女性の心はクロームに奪われている。

 この状況は本当にどうすることもできない。なんせ相手はクロームだ。女性と関係を持とうとするどころか全く手を出そうとしない。女性はそんな真摯な態度に余計好意を抱くし、勇者だから言い寄ることもしづらい。結果、その恋心はずっと維持され続ける。少なくとも俺達が滞在する間は。

 お陰で俺には付け入る隙がないのである。

 ……最近の俺の欲求不満っぷりは半端ない。下半身が運動不足なのである。

「私、クローム様にとっても失礼な勘違いをしていました。クローム様は本当に優しく、真っ直ぐで、素晴らしい人でした……。それに気付くことができたのもガンマさんのお陰です。本当に、ありがとうございます」

「あ、ははは……そ、そいつぁよかったねぇ……」

 引き攣った笑みも看板娘は気付いていない。頭の中はクロームでいっぱいなんだろう。

 どいつもこいつもそんなにクロームがいいのかよ、くそっ。

 お、俺も結構優良物件なんだぜ? などとクロームと競う無謀さは俺になかった。

 さすがに相手が悪すぎた。




 セシウのメモ書きにあった酒場というのは、宿屋のすぐ近くにある。到着してすぐに村を調査して、頭に地図は叩き込んであった。いつもの癖である。

 こういうのは調べておかないと落ち着かないんだよな。

 この村は建物が密集してることもないので、容易に酒場まで辿り着くことはできた。ここの酒場は日中は飲食店として営業されていたはずだな。

 店内からは人々の喧噪が聞こえてくる。朝っぱらからどいつもこいつも元気だな。

 つってももう十一時か。朝っぱらって言うほどでもない。もう三人とも食い終わってんだろうな。まあ、俺は昼食として摂っちまえばいいか。

 ため息を吐き出しつつ、俺は酒場のウエスタンドアを開けた。

「あ、ネボスケ眼鏡が来た」

 店員が俺に気付きいらっしゃいませと言うより先に、カウンター席に座ったセシウが失礼極まりないことを言ってくる。言い返せないわけだけど。

 手酷い歓迎に気分を害するが、帰るわけにもいかないので渋々、カウンター席に座る三人の方へと向かう。

 店内はやはり客で賑わっており、広いとはいえない店内の中に敷き詰められたおっさんどもがテーブルを囲み、わいわいと騒ぎ合っている。あの両手にジョッキが握られていないことが奇跡だと思う。

 真っ昼間から飲み始めてなんら不思議じゃないテンションだ。

 ほとんどの奴はテーブル席につき、席が埋まり座れなかった者はテーブルを囲んでいる。今日はパーティーかなんかだろうか?

 クローム達だけがカウンター席に座っており、なんだか疎外感さえ感じる。

「お前の朝は随分と遅いんだな」

 慈悲深い俺はそんな寂しい勇者一行の話し相手になってやろうと来てやったのに、クロームの声は随分と冷たいもんだった。

 今日のクロームはいつもぴんと伸ばしている背筋も背凭れに預けられ、腕を組んでふんぞり返るように座っている。しかも右足は貧乏揺すりまでしていた。

 いつものクロームらしからぬ態度だ。

「いいだろ、別に。たまにはのんびり休んでもよ」

 言いながら俺は一番脇に座るセシウの隣に腰を下ろす。奥からプラナ、クローム、セシウ、俺という座り順である。

「日頃弛んだ態度の奴は緊急時でも弛む。結果、俺達まで迷惑を被ることになる。常日頃から雑念は排するべきだ」

「んな堅っ苦しいことしてられっかっつぅの。将来禿げんぞ? あ、おっちゃん、ここ煙草は? 吸える? ああ、あんがと」

 カウンター席の向こうにいるマスターと思しきおっちゃんから許可を取り、ついでに灰皿まで出してもらう。

 宿屋が終日禁煙なのでニコチンが大分不足している。ここにいる間に摂取しておこう。

 セシウの向こう側にいるクロームは眉間に皺を寄せ、見るからに不機嫌そうだ。

「貴様のその軽薄な振る舞いが普段俺達にどれだけの迷惑を与えているのか考えたらどうだ?」

「迷惑も何も、よ。俺はいつだってこんなもんなつもりだけど? つぅか、別に急ぎの用事があるわけでもあるめぇし」

 言いながら煙草を咥え、火を点ける。昨日の夕方以来の煙草は最高に美味い。やっぱりこれがないと気合いが入らないな。

「全く……貴様のような軽薄な男が仲間というのが俺の人生の汚点だな」

「そりゃどうも。勇者様の汚点だなんて光栄ですね」

 これはそうそうなれるもんじゃねぇからな。有り難く頂戴しておこう。

 勇者様は眉間の皺をさらに深くし、ため息を吐き出す。傍らのプラナはおろおろと落ち着かない様子で俺とクロームのやり取りを見ている。その顔は今にも泣き出しそうだ。

 争い事が苦手だからな、プラナは。

「でさー! 三人とも何食べる? ていうかどのピザがいい? 何枚?」

 俺とクロームの間に座っていたセシウは身を乗り出しながら、カウンターにメニューを広げ、俺達の顔を順々に見る。

 この殺伐とした俺とクロームの間に挟まれて、平然と割り込むことができるこいつの神経が理解できない。

「あれ? お前らまだ食ってねぇの?」

「それはセシウがだな――」

「――いやぁ、ピザ食べたかったんだけど、そしたらここ大きいサイズしかなくて、そしたら四人で一緒に食べた方がお得じゃん?」

 何かを言おうとしたクロームを退けて、セシウは俺へと顔を近づけてくる。

 うわ、今こいつクロームの足蹴ったよ……。間近にあるセシウの顔の脇から、椅子に座ったまま足を抱えて呻き声を漏らすクロームの姿が垣間見える。

 要するにセシウだけが食いたかったってわけだな。で、それに付き合わされたクロームとプラナも朝食を我慢しなければならなかったということか。そりゃ来るのが遅い俺に苛立ちを覚えるのも無理はない。

「……で、おめぇは何食いてぇの?」

 頬杖をかいて、セシウに訊ねる。正直、俺は寝起きなのであまりピザなどという重量感ある円盤を食う気にはなれないわけだが、ここまで待たせたのは俺だし文句は言えない。

 それにこんだけ時間があったなら、十分頼みたいものは決まっているはずであろう。

「んー、これとー、これとー、これとー……それからこれとこれとこれ!」

「バッカじゃねぇの!?」

 総数六枚であった。

「こんだけ時間あって、なんで六枚も候補があるんだよ! もっと絞れよ!」

「いやぁ……待ってる間、メニュー見てたらさ、どれも美味しそうに見えてきちゃってさぁ。あはは」

「あははじゃねぇよ! 四人でそんなに食えるわけねぇだろ!?」

 いくら朝食分も摂るとはいえ、あまりにも多すぎる。二枚あったら十分だろう。どう考えても。

「いいんじゃないか?」

 足の痛みが引いたらしいクロームが、いつものように腕を組んで、俺達に会話に入ってくる。

 ……こいつは今なんて言った?

「俺とセシウならそれくらいどうってことはない」

「お前らはいいけど、俺とプラナが食えねぇんだよ!」

 確かに前衛二名は異常なくらいによく食べる。胃が異次元に繋がっているのでは、と思うくらいに食べる。三人前とか平然と平らげるからな、この二人。

 それとは対照的に俺とプラナは全く食べない。俺は普通に一人前くらいは食えるんだけど、プラナに至っては一般の三分の一くらいしか食べない。なんとも燃費がいいように思えるのだが、そのうち倒れそうで結構心配だ。

「別に、お前らが残した分は俺達が食べればいい。それくらいどうってことはない。なあ、セシウ?」

「もち! むしろ一人で六枚食べれないこともない気がする! 今の私ならできる!」

 ぐっと親指を突き立て、にかっと笑って断言するセシウ。正直若干否定しきれない。こいつならそれくらいぺろっていけちゃいそうなんだよな。

 流石ゴリラ。

 なんでこいつら太らないんだろう? 結構マジで。

「で? 頼んでいい?」

 瞳を輝かせて俺に詰め寄ってくるセシウ。こういう時、こいつの顔は本当に無邪気な子供みたいになる。体ばっかりでかくなって、本質は幼少の頃から何一つ変わりやしない。

 頬杖をかいたまま煙草の灰を落として、俺はため息を吐き出す。

「プラナ。お前はどうだ? いけそうか?」

「ま、まあ……ほとんど二人が食べて下さるでしょうし、私は特に……」

 そりゃこの流れに逆らえるプラナではないしな。おどおどと答えるプラナに苦笑を漏らし、俺は煙草を揉み消す。

「そうだな。なら問題ねぇよ。好きにしろ」

 ぶっきらぼうながらに俺も賛成を示す。ここまでセシウが食う気が満々なのに、それを否定するってのは俺も心が痛む。

 まあ、食べたくないわけじゃないしな。

「よっしゃ!」

 小さくガッツポーズをしたセシウはまるで敵地に乗り込むように息巻き、すぐさまカウンターのおっちゃんへと身を乗り出して注文をしていく。そんなに食いたかったか、こいつは。

 ホント……欲望に正直な奴。呆れも通り越して尊敬さえ覚えるわ……。

「ガンマ兄さんはセシウに甘いな」

 セシウの後ろから俺の方へと顔を近づけて、クロームが嫌味を言ってくる。俺が一番苦手な嫌味だ。

「うっせ。逆らったら俺の肋骨が三本くらい脱着可能になっちまうんだよ」

「いいじゃないか。能無しのお前に芸が付くぞ」

 そんな芸はいらない。地味すぎて宴会でも盛り上がりやしねぇよ。