三月四日の深夜四時半。事務所に居た鷹塔祭は、電話機を使ってある人物に電話を掛けていた。
「俺だ。死体の解析は済んだか? ……あぁ、やっぱりか。でなければ、次元に穴を開けるなど実行できるわけがない。死体は総聖会に引き渡すなよ。あちらに送れば実験の素材とされるに違いないからな。お前の所で火葬してくれ。ではな――」
ガチャンッ、と受話器を戻した鷹塔は、ギリっと奥歯を鳴らした。
「――まさか、な。あいつが関係していたとは」
ポツリと呟く鷹塔。その口調には、明確な怒りと、相反する哀しみが宿っていた。
事務所の窓から射し込む月光が、デスクに置かれている書類を鮮明にさせる。
白紙に近い書類には、一文だけこう綴られていた。
『三人目の犠牲者、立華零香』――と。